結論
近年の日本では犯罪件数が2022年・2023年と2年連続で増加しています。ただし殺人などの凶悪犯罪率は依然として世界的に低水準であり、体感的な「治安悪化」はSNSや報道の影響も大きいと考えられます。外国人犯罪の割合はごく一部にすぎず、真の課題はデジタル社会に適応した新しい犯罪形態、そして若者を巻き込む「闇バイト」など組織化の変容です。
犯罪件数の推移はどうなっているのか?
・2023年の犯罪報告件数は70万3,351件で、2年連続の増加となりました
・窃盗が全体の約70%を占めており、殺人は912件(前年比+59)、強盗は1,361件(前年比+213)と増加傾向
・ただし人口10万人あたりの殺人率は2020年0.25、2021年0.23と依然として低く、日本は世界でも治安の良い国に分類されます
なぜ「犯罪が増えた」と強く感じるのか?
・統計的には増加は一部ですが、SNSやテレビ報道で「無差別事件」などが強調され、不安感が拡張されやすい
・特殊詐欺やネット詐欺など、身近に被害が広がる犯罪が多いため、体感として治安が悪化したように思われやすい
「無敵の人」や通り魔的な犯罪は増えているのか?
・ランダムに起こる凶悪犯罪は確かに目立ちますが、統計全体で見れば件数は依然として少ない
・ただし孤立・貧困・心理的ストレスの蓄積が背景にあり、潜在的なリスク要因として警戒されています
・ネット社会で「真似する」心理が拡散しやすい点も懸念されています
外国人犯罪の割合はどうなのか?
・全体の犯罪件数に占める外国人の割合は2%前後にとどまります
・多くはビザ違反や技能実習制度に関連する事件であり、「外国人犯罪の急増」はデータ的に裏付けられていません
・むしろ社会的偏見や印象の拡張が強調されているといえます
組織犯罪はどう変化しているのか?
・伝統的なやくざ組織は縮小し続け、2024年時点で組員は約9,900人にまで減少
・一方で、オンライン上で匿名的に人を集めて犯罪を行う「闇バイト」や「tokuryū」と呼ばれるグループが台頭
・これらはSNSやアプリを通じて若者を巻き込み、詐欺・強盗・特殊犯罪を実行するため、新たな社会問題となっています
闇バイトとは何か?
・SNSや掲示板で「簡単に稼げる」と勧誘され、若者が詐欺や強盗の実行犯として利用されるケース
・背景には経済的困窮や孤立感があり、従来の「やくざの下っ端」よりも匿名・流動的な仕組みで実行される
・摘発も難しく、未成年や大学生が加担するケースが増えて社会的な警鐘が鳴らされています
総括
・日本の犯罪件数は増加傾向にあるが、凶悪犯罪率は依然低い
・「治安悪化」の印象は、メディアやSNSの影響が大きく、体感治安と実際のデータに差がある
・外国人犯罪の割合は少なく、数字的に「急増」とはいえない
・真の課題は闇バイトやサイバー犯罪のような新しい犯罪形態であり、特に若者の巻き込みが深刻な問題になっている
参考文献
・Japan Data: Japan’s Crime Figures Rise for Second Successive Year(2025年)
・The Japan Times: Crime numbers rise in Japan for second straight year(2024年)
・Macrotrends: Japan crime rate and homicide rate(2021年までの推移)
・SCMP: Is Japan becoming unsafe?(2025年)
・Wikipedia: Tokuryū(日本の新犯罪グループ)
・Wikipedia: Yakuza membership decline(2024年)
・警察庁 犯罪統計(2023年版)