結論
喫煙所の周りに蜘蛛の巣が多いのは、蜘蛛がタバコの煙を好んでいるからではなく「光に集まる虫が多い」「構造物が多く巣を張りやすい」といった環境条件によるものです。煙そのものは蜘蛛にとって有害ですが、巣を移動するコストが高いため「煙たいがメリットが勝つ」という状況が生まれていると考えられます。
蜘蛛は本当に煙を平気なのか？
蜘蛛も基本的に酸素を必要とする生物なので、タバコ煙に含まれる有害物質や一酸化炭素は有害です。実際に密閉空間で煙に晒されれば活動が鈍くなったり死に至ることもあります。
ただし、喫煙所は屋外で風通しがあり、煙が常時充満しているわけではありません。そのため蜘蛛にとって「苦しいけどすぐに命に関わるほどではない」環境となります。
なぜ喫煙所に蜘蛛の巣が多いのか？
蜘蛛が煙を好んでいるわけではなく、以下の要因が大きいです。
・喫煙所は夜間に明かりがついていることが多く、光に集まる蛾や小虫を狙いやすい
・建物の角や柵、屋根など「巣を張る構造」が多い
・人が頻繁に行き来するため、食べ物や飲み物に誘引された虫も集まる
👉 つまり蜘蛛にとっては「煙がある場所」ではなく「虫が集まりやすい好条件の場所」となるのです。
煙たいのになぜ逃げないのか？
本来なら煙たい環境からは逃げたいはずです。しかし蜘蛛は一度巣を張ると、その維持や再構築には大きなエネルギーが必要です。
・巣を張り替える＝再び良い立地を探す必要がある
・獲物の流入が見込めるなら「多少煙たいけど残る」方が得
この「コストとメリットの天秤」で結果的に喫煙所周辺に留まっていると考えられます。
最初に巣を張った蜘蛛の役割
興味深いのは「最初にその環境で巣を張った蜘蛛」です。
・他の蜘蛛は「巣が張れる＝獲物が取れる」と判断しやすくなる
・巣が多いことで虫の捕獲効率がさらに上がる
👉 最初にその立地を選んだ蜘蛛は、ある意味で「パイオニア」であり、その後の蜘蛛の集積につながるのです。
生存戦略としての喫煙所蜘蛛
蜘蛛は環境に適応する生物です。喫煙所という「人間の生活空間」が、結果的に「虫が集まる餌場」になったため、煙というリスクを抱えつつも留まる生存戦略を選んだといえます。
これは「環境のリスクを許容してでも餌を取る」という、自然界でよく見られる戦略の一例といえるでしょう。
まとめ
・蜘蛛は煙を好むわけではなく、喫煙所は虫が集まるから巣を張る
・煙は有害だが、餌を取れるメリットが大きく移動コストも高いため留まる
・最初に巣を張った個体が環境を切り開き、他の蜘蛛も集まる
・結果として「喫煙所＝蜘蛛の巣だらけ」という現象が成立する
参考文献
・Foelix, R. F. (2011). Biology of Spiders. Oxford University Press.
・Wise, D. H. (1993). Spiders in Ecological Webs. Cambridge University Press.
・日本蜘蛛学会「蜘蛛と人間環境の関係」研究報告（既知の情報から整理を加筆）
