結論
田中角栄は「金権政治の象徴」でありながら、圧倒的な実行力とカリスマで人々を惹きつけた政治家でした。汚職と功績を併せ持つその姿は今でも評価が分かれます。他の政治家たちからは「怪物」と恐れられ、「庶民派の天才」と尊敬された一方で、メディアからは徹底的に叩かれた存在でもありました。さらに家庭や恋愛、ゴシップも世間を賑わせました。
他の政治家たちから見た田中角栄
中曽根康弘の印象
・「角さんは怪物だ。地方の農協から財界の大物まで全てを掌握する」
・自分が首相になれたのは田中派の支持があったからだと認めており、功績と脅威を同時に感じていた。
大平正芳の印象
・温厚な性格で、田中の強引さを苦々しく思いつつも、政策遂行力は認めていた。
・「あの人は庶民の声を聞いて政治を動かす」と、エリート官僚出身としては学べる部分もあったと語っていた。
福田赳夫の印象
・田中派との激しい権力闘争を繰り広げた。
・「カネと力で政治を牛耳る田中は許せない」と徹底的に対立。後に「角福戦争」と呼ばれる派閥抗争に発展。
小泉純一郎の印象
・若手時代に田中政治を目の当たりにし、「政治はこうやって動かすのか」と学んだとされる。
・しかし「角さんの時代はもう終わった」と、メディア戦略を重視する自らのスタイルで田中型政治を乗り越えたと意識していた。
結婚と家庭生活
・妻は田中はな(政略結婚に近い形で結ばれたとされる)。
・夫婦仲は冷めていたとも言われ、田中角栄は政治に没頭し、家庭を顧みる時間は少なかった。
・娘の田中真紀子は後に外務大臣となり、田中の血を引く政治家として注目された。
恋愛やゴシップ
・田中角栄は女性問題でも度々噂になった。特に有名なのは愛人問題。
・秘書を務めていた女性や芸能人との交際が週刊誌で取り沙汰された。
・豪快な金の使い方から「夜の世界」でも強い影響力を持っていたと言われる。
・こうしたスキャンダルも「角さんらしい」と笑い話になる一方、メディアからは格好の標的にされた。
メディアへの対応
・田中角栄はメディアとの距離が近く、新聞記者やテレビ局の幹部にもしばしば金や便宜を提供していた。
・その一方で、批判記事には激しく反応。特に「文藝春秋」に連載された立花隆の『田中角栄研究―全記録』は大スキャンダルとなり、政界を震撼させた。
・角栄は「俺を悪者に書くならそれでもいい。ただ国民は俺をわかってくれる」と豪語していた。
・実際、ロッキード事件で逮捕されても「角さんを信じる」と支援し続けた地方の有権者は多かった。
田中角栄の魅力と恐ろしさ
・記憶力と人心掌握術で相手を味方にする。
・金をばら撒いてでも地方を豊かにしたいという「庶民感覚」。
・派閥政治を極限まで拡大し、「最大派閥・田中派」を作り上げた。
・一方で汚職とスキャンダルの連続で、「金権政治の象徴」として批判も集中。
今でも評価が高い理由
成果が目に見える(新幹線・高速道路などインフラ整備)。 「庶民を覚えている政治家」として地方から慕われた。 現代の「決められない政治家」と対比され、豪腕さが再評価されている。
まとめ
田中角栄は「庶民派の天才政治家」であり「金権腐敗の象徴」という二面性を持つ人物でした。政治家仲間からは怪物と恐れられ、庶民からは英雄と慕われ、メディアからは徹底的に叩かれた。家庭や恋愛においても波乱万丈で、スキャンダルすら人々を惹きつける魅力となった。
現代の政治家がSNSや世論を気にして小さくまとまる中、田中角栄の豪腕さは「失われたリーダー像」として今もなお強烈な存在感を放っているのです。
参考文献:
・立花隆『田中角栄研究―全記録』講談社
・御厨貴『田中角栄—政治の天才、稀代の悪党』中央公論新社
・塩田潮『田中角栄 100の言葉』文藝春秋
・朝日新聞アーカイブ「ロッキード事件関連報道」
【コメント】
中卒から叩き上げで総理大臣にまでなったって創作でもボツになりそうなサクセスストーリー
有り得なさすぎて気になった。
今じゃ絶対不可能、高度経済成長期の乱期だからこそだなとも思う。政治家としての清廉潔白さとは相容れなかったとしても、確実に物事を決定して進める手腕は今の政治家が学ぶべき点も多いと思う。
