【結論】
ADHD当事者における「淡々と行動できる日」と「一切動けない日」の差は、意志や性格の問題ではなく、脳の情報処理構造とエネルギー配分の問題であり、いわゆる「心のシールドがある日」は一般的な人の通常状態に近い一方、ADHD当事者の通常状態はシールドが無く前頭前野が過活動している状態であるため、外出や対人行動に極端なコストがかかる。この不便さは事実であり、努力で完全に解消できるものではない。
【そもそも心のシールドとは何なのか?】
心のシールドとは比喩表現であり、医学的な正式用語ではないが、体感としては「感情・思考・評価が行動に割り込んでこない状態」を指している。シールドがある日は、行動が半自動的に開始され、意味付けや失敗予測が後回しになる。これは感情が無いのではなく、感情処理の順番が行動の後ろに回されている状態である。
【シールドがある日の具体的な特徴】
起きた瞬間から「今日は行こう」と自然に体が動く
着替えや準備をしている最中に迷いが入らない
外出や対人行動をしても消耗感が少ない
完遂後に「なぜ今日はできたのか」と自分で驚く
行動前に意味や価値を考えていない
失敗や迷惑への想像がほとんど立ち上がらない
【シールドがない日の具体的な特徴】
行動前に全てを理解・想像・計画しないと動けない
外出そのものが高コストに感じられる
人に迷惑をかける可能性を過剰に想像する
準備だけで疲れ果ててしまう
頭の中でif思考やシミュレーションが止まらない
体が動く前にエネルギーを使い切る
【なぜADHDではこの差が激しくなるのか?】
ADHDでは前頭前野の機能調整が不安定になりやすく、注意・感情・行動開始の制御が状況依存になる。そのため、ある日は思考が抑制され行動が優位になり、ある日は思考が過剰に働いて行動が阻害される。この切り替わりは意志で操作できるものではなく、覚醒度・睡眠・刺激量・負荷の累積など複数要因で変動する。
【普通の人はどうなのか?】
一般的な人は、外出や用事を低コスト行動として処理できる。情報不足や失敗の可能性があっても「行けば何とかなる」という探索モードで動けるため、事前準備やシミュレーションに多くのエネルギーを割かない。つまり一般的な人にとっての通常状態は、ADHD当事者にとっての「シールドがある日」に近い。
【普通の人はそんなに手間がかからないのか?】
事実として、かからない。
行動前に全工程を理解する必要がない
現地で修正できる前提で動ける
失敗しても精神的ダメージが小さい
対人評価を過度に意識しない
これらの違いにより、行動開始コストが根本的に異なる。
【準備が必要になる理由】
外出や対人行動が高コストであるため、一度で成功させたいという合理的判断が働く。これは完璧主義ではなくコスト最適化である。失敗時の精神的損失が大きいため、事前にリスクを潰そうとする。
【準備すると行けるが準備に疲れる矛盾】
準備は本来、当日の思考負荷を下げるためのものである。しかし準備を当日に行うと、前頭前野がフル稼働し、その時点でエネルギーを消耗してしまう。その結果「準備はできたが行く気力が残っていない」という状態になる。
【前日に準備すると行ける理由】
準備と実行を別日に分けることで、当日の判断・想像・評価を省略できる。区役所に行けた例のように、書類・手順・持ち物を前日に確定させることで、当日は考えずに体を動かすだけになる。
【一気にやるしかない理由】
タスクを分割すると、その都度行動開始コストが発生する。ADHD当事者にとっては、毎回スタートラインに立つのが最も消耗するため、シールドがある日にまとめて一気に処理する方が合理的である。
【二度手間が起きやすい理由】
事前シミュレーションは現実の曖昧さを完全には再現できない。暗黙ルールや例外が多いため、前提が一つズレるだけで全体が崩れる。これは準備不足ではなく、準備依存度が高い構造の副作用である。
【コンサータを飲んでいても起きる理由】
コンサータは覚醒と集中を助けるが、思考過多や意味付けの抑制には限定的である。そのためシールドが安定しやすくはなるが、常時オンになるわけではない。
【これは受け入れるしかないのか?】
諦めとして受け入れる必要はないが、設計として受け入れる必要はある。この不便さは実在し、努力で完全に解消することは難しい。無理に普通に合わせようとする方が消耗が大きい。
【結局この特性は不便なのか?】
不便である。
工程が多い
エネルギー消費が激しい
成功条件が限定的
普通の人より生活難易度が高い
これは事実であり、否定できない。
【それでも成立している行動パターン】
条件成立型
前日準備型
一気処理型
自動起動待ち型
これらは欠陥ではなく適応である。
【総括】
ADHD当事者にとって「淡々と動ける日」は例外的なボーナス状態であり、「動けない日」は怠慢ではなく通常状態である。普通の人と同じ行動基準を自分に当てはめると、常に自己否定が発生する。この不便さを正しく不便だと認識すること自体が、現実的な自己理解である。
【参考文献】
american psychiatric association. diagnostic and statistical manual of mental disorders, fifth edition (DSM-5-TR).
russell a. barkley. attention-deficit hyperactivity disorder: a handbook for diagnosis and treatment.
日本精神神経学会. 注意欠如・多動症(ADHD)診療ガイドライン
国立精神・神経医療研究センター 知的・発達障害研究
厚生労働省 発達障害者支援施策資料
【コメント】
シールドって表現をしたのは、僕でなんだか外に出るときに、心がむき出しになっていて、人と関わるのも何かをするのもすごく消耗しやすくて、疲れて感情的になる日があるなって。事前に準備をしていないと、その場で行動するのが苦手で、体よりも思考ばかり先に立って全然動けないっていうことが多くて。それを怠けだと思っていたけど、最近もうそういうモードがあるんだなって。
少なくとも僕は前日までに緻密な計画とイメージトレーニングをした上で考える必要がないほど準備をした状態で、ある日、当日にさっと行動しようとようやく外に出れる感じ。
シールドがない日に、家でしっかり準備をして、シールドがある日にささっと考えずに行動してしまう。
クソめんどくさいなあほんと
