結論
SwitchやiPhoneのような電子機器は「人が考え、設計し、判断した内容を、判断しない機械が忠実に繰り返し、物理的に固定された基板と、後から書き換え可能なプログラムを組み合わせて大量生産されており、作業員は全体像を知らなくても作業できるよう分断され、起動確認すらも機械化され、情報漏洩は人を信用しない構造で防がれている」という仕組みで成り立っている。
そもそもswitchやiphoneは人が作っているのか機械が作っているのかという疑問について
最初に多くの人が抱く疑問は「こんなに精密なものを人が作っているのか、それとも全部機械なのか」という点だが、実態は人と機械の分業である。人がやっているのは設計、判断、例外処理、品質基準の決定であり、機械がやっているのはそれを一切考えずに正確に繰り返すことだ。大量生産の現場では人がはんだごてを持って一つ一つ部品をつけることはほぼなく、表面実装技術(SMT)と呼ばれる方式で、機械がチップ部品を高速で配置し、リフロー炉という加熱装置で一括ではんだ付けを行う。
はんだごてと黒い四角い高そうなチップの正体
分解動画などでよく見る黒い四角い塊はCPUやSoCと呼ばれる部品で、確かに高価であり、電子機器の中枢である。しかしこの部品単体では何もできず、周囲の回路や電源、メモリ、通信部品などがそろって初めて意味を持つ。はんだごては試作や修理では使われるが、量産では人が直接使うものではなく、はんだペーストと加熱装置が主役になる。
なぜ基板はいつも緑色なのか
緑の基板はプリント基板(PCB)であり、表面の緑色はソルダーレジストという保護膜である。緑である必然性はないが、歴史的に不良が少なく、目視検査で目が疲れにくく、コストが安定していたため業界標準として定着した。現在では黒、青、赤なども可能だが、性能差はほぼなく、慣習とコストの問題で緑が多い。
緑の基板の上にある導線はプログラムなのか
ここが最も混乱しやすい点だが、基板上の導線はプログラムではない。銅でできた物理的な配線であり、どことどこが電気的につながっているかを固定しているだけの存在である。一度作られたら書き換えはできず、判断もしない。電気は決められた道を流れるだけで、ここに知能は存在しない。
では基板はどうやって作られているのか
基板そのものは人間が回路図を設計し、それをCADデータに変換し、そのデータをもとに機械が銅を削り、穴を開け、層を重ねて作られる。ここで使われる機械はプログラム制御されているが、作っているのは判断しない物理構造である。つまり「プログラムで基板を作る」のは事実だが「プログラムする基板を作る」という意味ではない。
プログラムを書き込むとは何をしているのか
プログラムを書き込むとは、CPUに判断力を与えることではない。「電源が入ったらここから処理を始めろ」「この信号が来たらこの手順を実行しろ」という命令書を記録する行為である。判断しているように見える動作も、すべて人間が事前に決めた手順をなぞっているだけである。量産時には専用の書き込み装置が同じプログラムを高速で何万台にも書き込む。
起動できるかどうかは人が確認しているのか
結論として、起動確認を含む基本動作チェックはほぼすべて機械で行われている。人が一台ずつ電源を入れて確認するのは非現実的であり、専用の自動テスターが通電、起動シーケンス、信号、異常電流、発熱などを数秒から数十秒で検査する。異常が出た個体のみを人が再確認する。
分解したら保証対象外になるが違法なのか
私物を分解する行為そのものは原則として違法ではない。ただしメーカー保証は契約条件であり、分解した時点で保証が無効になるのが一般的である。違法になる可能性があるのは、技術的保護手段の回避、海賊版ソフトの利用、改造品の販売など、分解後の行為である。
発売前に大量生産しているのは本当か
switchやiphoneのような製品は、発表の数か月前から量産が始まっている。発売日に世界同時供給を行うためには、発表後に作り始めるのでは物流が間に合わないためである。
そんな極秘製品をバイトで作れるのか
結論として、発売前の新製品ラインに素性不明の短期バイトが入ることはほぼない。情報漏洩は写真一枚、部品名一つで致命的な影響を及ぼすため、長期契約社員や身元確認済みの人材が使われ、個人単位でNDAが結ばれ、スマートフォンの持ち込みは禁止され、工程は細かく分断される。
作業員は何を作っているのか知らないのか
完全に何も知らされないわけではないが、全体像と確信に至らないように設計されている。たとえばジョイコンのような部品を扱っていても、それが新型switchなのか、試作なのか、修理用部品なのかは断定できない。製品名、発売日、完成形を知るのはごく一部の上位担当者のみである。
なぜそこまで分断するのか
人は悪意がなくても情報を漏らす可能性があるため、企業は人を信用するのではなく、漏れても致命傷にならない構造を作る。リーク情報が部品単位で断片的に出るのは、この分断構造の結果である。
まとめ
電子機器の製造は「判断する人間」「判断しない機械」「固定された物理構造」「書き換え可能なプログラム」という四層構造で成り立っている。基板の導線はプログラムではなく、プログラムは基板そのものを判断させるものではない。起動確認すらも機械化され、人件費と情報漏洩リスクは徹底的に削減されている。この全体像を理解すると、分解動画で見える世界や、発売前に情報が漏れにくい理由が一気につながる。
参考文献
・charles j. hill, manufacturing processes for electronic assemblies, mcgraw-hill education
・clyde f. coombs, printed circuits handbook, mcgraw-hill
・apple inc., supplier responsibility progress reports
・john l. henshaw, surface mount technology principles and practice, springer
・任天堂株式会社 有価証券報告書・公式ir資料
